前回よりの続きです。


ガソリンタンクのクイックチャージャーが甘い。

耐久レーサーは、ガソリンの補給さえも速いのです。
速くガソリンをタンクに流し込むための装置を「クイックチャージャー」と呼びます。

どれだけ速いかというとタンク給油口の直径が50mmぐらいしかないのに、給油口開けて24Lを給油して、装置を外すまでに5秒ぐらいしかかかりません。
(YZF-R1が24L入る訳ではありません。)

負圧やポンプは利用禁止で、自然落下のみでこのスピードですからモノ凄い速さですな。
(給油口の直径や給油するガソリンの温度、クイックチャージャーの高さまでルールで決まっています。)

当然各チーム、チャージャーやフェルタンクの中身にありとあらゆる工夫をしていますので、実は秘密のカタマリです。

そのフェルタンクの給油口、有力チームの中でヤマハだけが1穴なんですな・・・。

2穴タイプは1個がガソリン、もう一個がタンクの空気抜き用です。
1穴タイプも中身は2穴に分れていて、ガソリンと空気が別通路になっていますが・・・。

fuel tanks









実はこの1穴タイプは車のF1で使用されているタイプ(直径72mm)と同じです。
しかし今のF1はレース中のガソリン補給は禁止なのです。
さらにF1は全チーム同じ給油装置ポンプを使い、1秒間で12Lしか入れてはいけないレギュレーションとなっております。
以前の事故を反省とし、完全にスピードより安全優先のシステムとなっております。

なので1穴タイプは安全なのは良いですが、
「装置を取り付けガソリンを流し込み、予定量が入ったか確認、最後に装置を取り外す。」
そこまでのトータル時間が数秒遅いのです。

20190728_15









前回のタイヤ交換もガソリン補給も、たった数秒の話です。
「数秒遅いだけ・・・。」
開発陣がそう思ったのなら、そのチームは勝てません。

勝つために、秒を削るには何をすればよいのか?

「数秒遅いかもしれない・・・」という可能性があったのなら、その可能性を全員が一丸となって削らなければいけなかったのです。





決勝は最後の5分、イロイロありましたね。

あの時間までに、ヤマハの#21がピットに入った回数は 7回
正式リザルトでは1位のKAWASAKIとの差、わずか 19秒差・・・




レースはタラレバ禁止、机上の空論であることは百も承知ですが・・・
19を7で割ってみたくなるのは、私だけではないですよね?





4つめのダメは来週の月曜日です。

PRO-TEC名古屋北
柴田 典生