この辺りでタイヤのお話を一回・・・。


以前「YZF-R1で走るレーシングチームの片棒を担いでみる ⑤」の中で、
「走ってみないと分からん。」とした、例のタイヤです。


本題に入る前に「知っているようで知らないレース用のタイヤあれこれ」

いわゆるスリックタイヤ(ドライタイヤ)のお話です。

メーカーさんのHPや雑誌に記載されているような内容は、自力でググってください。
もっと素朴な、違う目線でのスリックタイヤのお話です。
たぶん2回に分かれてUPします。
(それぐらい長いので、覚悟してください。)
YZF 019

















素朴なQ,1
スリックタイヤで公道を走行すれば、ものすごくグリップするのか?
おおよそのA,1
しません。タイヤの適正温度を保ちながら公道走行することは、現実的には無理です。
むしろ冷え過ぎて滑ります。
またサーキットとは、路面アスファルトの品質?がまったく違います。
ちなみにレインタイヤは結構イケます。公道でドライ、ウェット路面のどちらでも結構イケます。
(ただし、違法ですので試してはいけません。)

素朴なQ,2
タイヤに溝が無いのに、摩耗状態や使用限度はどうやって分かるの?
おおよそのA,2
近くでタイヤを見ると、トレッド面にポチポチと直径5mmぐらいの穴が開けてあります。
その穴の深さであったり、走行後にタイヤ表面を見て、トレッドコンパウンドが千切れまくっている状態を見て、判断します。
また減ってくると、タイヤが明らかに三角形になるほど変形していきます。
まぁ実際にはその前に、ライダー本人が「もう無理!このタイヤは嫌。」と、走行感覚でわかります。

素朴なQ,3
スリックタイヤの空気圧はどれぐらい?
おおよそのA,3
めっちゃ低いです。リアタイヤなんぞ、R1用サイズだと冷間時で150kPaぐらいです。
YZF-R1の純正指定圧は290kPaですから、約半分ですな。
これは、「タイヤはつぶして、変形させて曲がるもんです!」という、バイクの基本に忠実に走れるようにです。

素朴なQ,4
なんであんな短時間でグリップしなくなるの?耐久性は低いの?
おおよそのA,4
耐久性は十分あります。気のせいです。少なくともタイヤの性ではありません。
仮にスリックに空気圧を290kPa入れて、公道のアスファルトの上を、制限速度ぐらいの一般的な走り方をした場合、公道用のハイグリップタイヤよりは長持ちします。
ちなみに「持つ」だけで、グリップに関してはQ1を読み返しましょう。
(ただしこれも違法ですので、試してはいけません。)

素朴なQ,5
タイヤウォーマーって、実際は何度ぐらいまで温めているの?
おおよそのA,5
タイヤに一周グルッと巻いて、タイヤ全体を80~90度に温めます。
公道走行用のタイヤより、レース用のスリックタイヤは使用時の適温が高く、また範囲が狭いのです。
スリックタイヤは適温になって初めてトレッドコンパウンドの粘度や、タイヤサイドの構造的剛性が適正になるように設計されています。
適温になると、ようやくQ.3の「タイヤはつぶして・・・。」ができるようになっています。
そして走行1週目から適温で走りたい人用に、タイヤウォーマーがあります。
しばらく走れば、路面との走行抵抗により、摩擦熱などで適温まで上がっていきます。
適温に上げ、維持するのは、ライダーの仕事です。

素朴なQ,6
自分のバイクにとりあえずスリックを履かせるだけで、サーキットで速く走れるの?
おおよそのA,6
まず最初は無理です。スリックは使いこなせるだけの腕がいります。
Q.3の「タイヤをつぶして・・・」という感覚と、Q.5の「適温を保てるレベルで走り続ける。」が、できる人でないとスリックは使いきれません。
同じ理由でYSPレーシングの中須賀さんが履いているスペシャルなタイヤを、普通のライダーが履くとまったく使いこなせずに、逆に危ないぐらいです。
またどこのサーキットでも、スリックがベストであるわけでもありません。
ミニサーキットなどは、スリックより溝有ハイグリップタイヤの方が向いている事も多々あります。



「おおよそのA」は、まさに「だいたい合ってる。」ぐらいの大きな心で、受け止めてください。



とりあえず、知ってるようで意外に知らないスリックタイヤについてのお話でした。

で、我がチームの選択タイヤのお話は次回に続きます。

提供はPRO-TEC名古屋北 柴田 典生 でした。